いや、これクソだろw バカミスの世界

くだらないけど、愛すべき読み物

イヤミスの女王と言えば、湊かなえとか真梨幸子が思いつく。読んだ後の何とも言えない、後味の悪さと嫌な感じが、病みつきになる小説を量産されている。ベストセラーになることも多く、映画化やドラマ化されて話題になることも多々ある。人気絶頂の、そんな「イヤミス」は今や文芸界の一大ジャンルと言っても過言ではない。

ただ、忘れてはならないことがある。イヤミスにも引けを取らない、日本独自のミステリジャンルの巨塔がもう一つある。

バカミスである。

時に反吐が出るほどくだらなく、読む人を落胆させる。いや、激昂させると言ってもよい。私は何度、書物を破り捨てたり、電子画面を割ろうとしたりしたことか。だが、最後まで読み進まずにはいられない、何かしらの魅力を携えた作品。それが馬鹿馬鹿しい、おバカなミステリ、バカミスなのである。

詳しくはウィキペディアの推理小説内にあるジャンルでバカミスの項でも見ておいて欲しい。

バカミスの代名詞『六枚のとんかつ』

バカミスと言えば、この本がまず一番に思いつく。蘇部健一の『六枚のとんかつ』である。

内容は説明しないが、設定も登場人物もセリフも展開も全てが馬鹿馬鹿しい。イライラしっぱなしでしょうがない小説である。(けなしているわけではない)

ちなみに、世の中のブログにはイライラしている人が大勢いる笑

私は結果的に、バカミスに耐性があったのかもしれない。完全に賛否分かれる作品であることは間違いない。どちらかと言えば、私は賛同する側に立つかもしれない。見識や良心を疑われようとも、バカミスの市民権を訴え出ようと思う。全てを敵に回しても、私はバカミスの味方である。クソだろこれって読んでいて思うけど、許せないこともあるけれど、バカミスの作者に悪気はないのだろう。笑おう、笑ってしまおう、殺人を。茶化してしまおう、この儚い浮世を。そういう境地に達した人にしか適さないのだ。だから私はあえて、本当の成熟した大人の人にしかバカミスを勧めない。私には馬鹿馬鹿しさをも受け入れる、確かな受容性があり、寛大なのだ。

これもバカミスを代表する作品である。もちろんオススメだ。早坂吝の『〇〇〇〇〇〇〇〇殺人事件

ただ、その内容に、思わず本を壁に叩きつける人もいるとかいないとか。確かに、タイトルからして馬鹿にしくさっている。でも、何だか良いのだ。これが理解できる、面白いと思える余裕があるのだ、私には。

今年読んだ最高のバカミス

 

私、実は、これ、バカミスだと知らずに買ったのだ。というのも、極度の大相撲ファンのため大相撲関連の小説だと電光石火の勢いで手にとってしまう。(電子書籍なので、クリックしてカートに入れてしまう)

小森健太朗の『大相撲殺人事件』

もうタイトルからして、おかしい。(読んでから気付いたけど)

目次には第一〜六話があり、よくよく読んでみると、可笑しみを誘う名付けの仕方で、相撲のことを知っている人間ならば、もうそれだけでおかしい。

目次リスト

  • 第一話 土俵爆殺事件
  • 第二話 頭のない前頭
  • 第三話 対戦力士連続殺害事件
  • 第四話 女人禁制の密室
  • 第五話 最強力士アソート
  • 第六話 黒相撲館の殺人

真面目な人なら、大相撲が冒涜されたと怒るかもしれない。バカミスを読みこなすには、そういう狭い度量ではダメなのだ。清濁併せ呑むつもりで、どんと構えて読まなくては。

では、第一話から検証だ。土俵の上で爆発が起こるのか、という想像が容易にできる。その想像をしただけで、私の場合、怒りとかではなくて、笑いがこみあげてくる。

何が、どうして、どうやって爆発するんだよと笑

ついつい、突っ込みたくなる。「馬鹿も休み休み言え」とはよく言ったもので、著者は次々と馬鹿を仕掛けてくる。第二話では前頭クラスの関取(力士の中でも上位のものしかなれないのが関取)が簡単に殺人の餌食になる。いやいや、普通返り討ちにできるでしょ、屈強な力士なら、しかも上位にいる関取なんだからなおさら。殺人は第二話に留まらない。第三話では、それが連続殺人になる。しかも、幕内の関取がほとんど死ぬという、クソ展開に。(すいません、バカミス展開・・・)この展開、実は、今年の九月場所に酷似している。語弊があるといけないので、きちっと説明するが、別に2017年の実際に行われた両国での本場所で、力士が殺害される事件が起きたわけではない。今場所あった珍事というのは、4人いる横綱中、3人の横綱が休場、大関並びにその他の人気力士も相次いで欠場するという、異例の事態になったことだ。人気力士が欠落するという出来事が小説のそれと似ているのだ。(言うなれば、ミスチルのコンサートに桜井和寿が出ないようなもの)私はこの物語に神聖なものを垣間見た。単なるバカミスを超えて、大相撲という神事とも言える、日本の国技のあり得べき姿を、このバカミス小説『大相撲殺人事件』が見事に言い当てる、もしくは未来を予測ないしは暗示したのではないかと思い、内心、NHKの相撲中継を見ながら戦慄したのだった。

人によってはクソミスかもしれないが

上述の作品は文芸の風上にも置けない、クソ作品だと断じる人も少なからずいるだろう。そうだ、その通りかもしれない。私自身、一度はこれらの作品はミステリ作品とは程遠い、いや、同じ範疇で論じるなんて、おこがましい。クソミスって名付けるくらいがちょうどいいと思っていたこともあった。でも、一度、心を落ち着けて、大人になって純真に楽しんでみて欲しい。きっと馬鹿馬鹿しさに、心躍るはずだ。もし、そうならないなら、今のあなたにはココロのゆとりがないに違いない。バカミスは精神の安寧を示すバロメータなのだから。