おすすめ電子書籍4 畠山 重篤『牡蠣礼讃』

2018年4月17日書評



オイスター最高という人向け

海のミルク「牡蠣」

牡蠣を食べすぎて嘔吐下痢になったことがある。苦しみの最中は原因が牡蠣だと露知らず、奇病にかかったかと思い、不安に苛まれたものだ。それは悶絶するほどの苦しみだった。口からは嘔吐し、尻からは下痢を垂れ流す。深夜に家のトイレを占拠し、便器にしがみつきながら汚物を撒き散らす。いつ終わるとも知れない苦しみに、死すら希求してしまう。そんな心境だった。未明にかけてようやく落ち着き、私はベッドに戻った。しかし、浅く眠りかけた数分後には、激痛が舞い戻ってきていた。再びトイレにこもり、結局その日はトイレで夜を明かすことになった。牡蠣のシーズンは真冬である。真冬のトイレがいかに寒いか、想像していただきたい。トイレから出た私は、時計を見た。すでに午前六時。体力を少しでも回復すべく、朝食を口にするものの、入れたそばからまた腹痛が始まる。地獄が堂々巡りしているのだ。私はとうとう病院に行くことを決意した。朝一番で病院に行くべく、私は衰弱しきった状態だったが家を出た。医者にかかるとあっさり、原因がわかった。要するに牡蠣の食べ過ぎだったようだ。牡蠣の毒素に対する耐性がなければ、毒素が蓄積されて嘔吐下痢になるらしい。この季節によくある症状らしい。ノロウイルスとかではないので、よく水分を摂って、下痢を出し切れば治ると言われた。念のため、抗生物質やらを処方してもらった私は一安心して家に帰った。もちろん、まだ完治はしていないので、トイレの厄介にはなったのだが。嘔吐下痢になる前の晩、友人との飲み会でオイスターバーに行き、その前の日も会社の飲み会で牡蠣を食べ、その前の週末、スーパーで買った生牡蠣のパックを一人で食べていたのだ。短期間の間に牡蠣を食べまくっていた。それが問題だったのだ。

オイスター

されど牡蠣への愛は消えず

あれだけ牡蠣に手痛くやられたというのに、私はシーズンになると牡蠣を食べたくなる。ちょうど畠山 重篤氏による『牡蠣礼讃』を読んで、今年は一層その思いを強くしている。牡蠣についての水産史を知れる名著である。親しみやすい語り口で愛嬌あるエッセイ調のその文章は実に読みやすい。この本が上梓された時、まだあの東日本大震災は起きていない。そのため、東北の牡蠣の産地がたくさん出てくると心が痛む。私はふと思った。今、この作者はどうしているのだろうかと。

2017年3月放送のNHKプロフェッショナルにその姿があった。牡蠣の養殖を復興させるために尽力しているそうだ。『牡蠣礼讃』を読むと、昔の話のはずが、無性に涙が出てくる。とにかく上手い牡蠣が食べたい。