ソニー・KDDI系の電子取次「ブックリスタ」もあんま儲かってなさげ

ソニー・KDDI系の電子取次「ブックリスタ」もあんま儲かってなさげ

決算2018年 ブックリスタ

あまり見慣れない会社

6月は株主総会が多く、決算発表も重なる。官報内の決算公告も見きれないほどの量があがっている。そんな中、電子書籍系の会社もこの6月、7月は出現することが毎年の恒例となっている。私もマークしているつもりが、あまり有名じゃない会社のため見逃しそうだったが、ブックリスタという会社の決算公告が6月21日に出ていた。そこまでの規模ではないのか、売上等の損益計算書(PL)はない。が、貸借対照表(BS)はあり、そこに当期純利益は2億3,900万円と出ている。儲かっている模様。営業利益もこの数字から類推すると、法人税が引かれる前の状態と大体同じくらいだと仮定し、3億くらいだろうか。

ソニーとKDDIの電子書籍ストアを運営

何で儲けているかと言えば、ソニーの「Reader Store」とKDDIの「ブックパス」に本を卸して儲けている。いわゆる取次という分野だ。電子書籍業界では、メディアドゥが最強の取次なので、かなり後塵を拝しているとは思うが、儲けている姿は素晴らしい。ただ、メディアドゥやその傘下にある出版デジタル機構に比べて、成長スピードは遅いように感じる。今年の決算で、最終利益が2.4億だったわけだが、昨年16年度版の決算公告をみてみよう。

2017決算公告ブックリスタ

2017年6月にでた、7期目の決算公告では、最終利益が2.27億であることが示されている。今年との差はわずかに1,200万円だ。儲けのほとんどを投資に回しているのかもしれないが、成長が鈍化しているともとれる。その証拠にさらにその前の決算公告を見てみよう。

2016決算公告ブックリスタ

2015決算公告ブックリスタ

まず、6期目の決算公告だが、何故か当期純利益の項目がない。しかし、心配しなくても大丈夫だ。さらにその前の5期目の決算公告から、純利益の推移を予想できる。利益剰余金の科目をみればよい。ここは最終利益の累計になっているからだ。5期目ではその数字が赤字でマイナス1.3億になっている。(ちなみに、5期目にも当期純利益の科目がない)6期目の利益剰余金は4,300万円だ。つまり、5期から6期への過程で、1.73億儲けたということだ。

  • ブックリスタの最終利益推移
    • 8期(2017年度) 2.4億
    • 7期(2016年度) 2.3億
    • 6期(2015年度) 1.7億

見ておわかりだろうか。成長率が去年から今年はガクンと落ちているのだ。電子取次の世界も、相当厳しい戦いが続いていることが伺える。やはり、我らがメディアドゥが救いの手を差し伸べるべきなのかもしれない。

ヤバイ兆候は他にもある

実は、最終利益だけ見ていても、その財務体質を見抜けないのだ。何故なら、上場していない以上、詳細な決算報告を見れないので、利益をどれだけ、再投資しているかが一切わからない。ひょっとしたら、大規模なマス広告などの広告宣伝費を多額にかけているかもしれない。そんな事情もあるので、わざと利益を小さくしているかもしれない可能性があるのだ。

しかし、その他にも成長が鈍化している証拠がある。8期の決算公告の流動資産と流動負債を見てみて欲しい。流動資産には売掛金、流動負債には買掛金が入っている可能性が高い。これは3月の傘下にあるソニー系電子ストアとKDDI系電子ストアの売上と出版社への版権料を示していると考えられる。この数字が7期と8期でそう伸びていない。いや、むしろ減っている。

  • 流動資産
    • 8期(2017年度) 24.1億
    • 7期(2016年度) 24.6億
  • 流動負債
    • 8期(2017年度) 18.6億
    • 7期(2016年度) 20.1億

この全てが売掛金や買掛金で占められているわけではないだろうから、実態はよくわからないが、3月といえば、決算月なので各社大規模なキャンペーンを行う。その影響で数字が大きくなっているとすれば、これらの数字の内訳のうち、売掛金や買掛金の比率が高くなっていることは容易に想像がつく。そして、そこに成長性がない。3月はもっとも儲かる季節なのだ。その3月が凹んでいるということは、もうおわかりだろう。成長が鈍化しているということの証左なのだ。