インプレスと出版科学研究所の電子出版市場の推計比較(2018年2月)
- 2018.02.03
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毎年恒例の出版月報1月号
出版月報2018年1月号がようやく手に入った
2018年1月25日に待ちに待った『出版月報2018年1月号』が発売。毎年最初の号には昨年の出版市場についての振り返りがなされる。中でも2015年からは新しく電子出版に関する考察も追加され、電子書籍市場におわす皆さんにとっては必読の書となっている。私が特に気にしているデータとして、市場規模を推計したデータがある。これは電子と紙の市場の推移を年集計で比較しているものだが、電子書籍がいかに伸び、旧来の紙出版がいかに減衰していっているかの様子が如実にわかる。今回は出版科学研究所が毎年1月に発表する前年の市場推計とインプレス社が毎年夏頃発表している年度毎の市場予測を比べてみたい。
※注意して見ておきたいのは、インプレスが年度集計であるのに対し、出版科学研究所は年集計である点。
インプレス社の数字と比較
冒頭のグラフを見てもらえれば一目瞭然なのだが、両者の出した数字にそこまで大きな隔たりはない。(まさに集計方法の違いによって生まれる誤差なのではないだろうか)
- インプレス
- 2014年度 1,266億
- 2015年度 1,584億
- 2016年度 1,976億
- 2017年度 2,280億
- 出版科学研究所
- 2014年 1,144億
- 2015年 1,502億
- 2016年 1,909億
- 2017年 2,215億
過去はどうあれ、インプレスが2017年度(2017年4月〜2018年3月)の予想で2,280億を出し、出版科学研究所が2017年(2017年1月〜2017年12月)の推計で2,215億を出し、その差は約65億なのだから小さなものだろう。ほぼ同じ規模感を算出している。
どうやら2,000億を超えてきたということ
細かい数字や差に関しては、どちらも推測値でしかないので議論しても無駄であろう。面白いのは電子書籍市場がようやく2,000億を超えたということだ。(流石にそこまで乖離はないだろうから、結構実態を表しているのではないかと思っている)前年比でも+16%成長を遂げている。ちなみに、出版科学研究所が出した2017年の2,215億という推計のうち、290億が書籍(小説とかビジネス書とか)、214億が雑誌(dマガジンなどを思い浮かべて欲しい)、1,711億がコミック(いわゆるマンガの単行本だ)だった。依然として電子コミックが市場牽引を果たしている格好だ。前年比で約17%伸びているらしい。しかし、文字モノ系も奮闘していると思う。もし、東野圭吾とか宮部みゆきとか百田尚樹とかが電子解禁となれば、ここはもっと大きく動く気がする。2018年は誰か有名作家が電子解禁してくれないだろうか。
他にも出版統計を見てみよう
次回は日販の『出版物販売額の実態 2017』に載っている市場規模とも比較してみたい。ただ、こちらの本、日販のECサイト「Honya Club.com」でしか取扱がなく、
PDF版も併売しているが、「こちらの商品は宅配のみのお取り扱いとなります。」と信じられないことが書いている。PDFなのに何で宅配なんだ! すぐにDLさせろよ笑 日販は電子書籍を知らないんだろうか。
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