おすすめ電子書籍6 黒川博行『国境』

2018年4月17日書評



北朝鮮

ご存知『疫病神シリーズ』

最近ヤクザ小説をよく読んでいる

心意気は完全に小市民な私だから、「ヤクザ」小説は読んでいてかなりの衝撃を受ける。そして、面白さからついつい、ページをめくる手が止まらない。(注:電子書籍でもめくれまっせ)真っ当な堅気であるからこそ、そういう読み物に惹かれるのだろうか。これ以上、この種の小説に傾倒すると、サイトの評価がそっち寄りにならないか心底心配である。別に極道を礼賛しているわけではないので、問題ないだろうが、Googleから反社会的なサイトと判断されないか少し不安ではある。しかし、面白かったからここに感想を残しておきたい。フィクションだから、大丈夫だろう。

黒川博行にハマっている

ミーハーで恐縮なのだが、直木賞をとった『破門』で私は黒川博行の疫病神シリーズを知った。読んでみて、とても面白く、早速私はこのシリーズのファンになった。『破門』の中には、過去作を匂わさせる文章が至る所にあり、過去作も是非読んでみようと思わせる仕掛けが山ほどしてある。(そして、まんまと引っかかった)特に『破門』の中で気になったキーワードが、二宮と桑原のコンビがしきりに思い出話をする「北朝鮮」だ。二人は北朝鮮にまで出張ったことがあるという。まさか、そんなことあるわけない、いくら小説とはいえ、北朝鮮をテーマにするなんてと思っていたが、『国境』という作品の中で、二人は北朝鮮を訪れている。(いきなり北行きの機内から物語は始まる)

この小説は北朝鮮ガイドの決定版である笑

『国境』という小説のテーマは北朝鮮だ。実際に北の国内情勢や北を取り巻く海外情勢も克明に記されている。日本にとって北朝鮮の問題は大きな問題だ。しかしながら、日々の報道では同じような情報が、何度もリフレインされるだけで、実際のところは不明である。大量のリアリティに欠く情報が断片的に私達に届く、これがまさに北朝鮮の狙いなのではないかとも思ってしまう。そうならないように、うまいことリアリティのある形に仕上げ、きな臭い情報を繋ぎ合わせ、ヤクザ要素をまぶして読み物にしあげたのが『国境』なのだ。これを読めば、北朝鮮に行った気になれる。(もし、行こうとしている人がいれば読ませるといい。行きたくなくなるはずだ)

最近の北朝鮮を知りたい人は読んでみれば

北朝鮮にヤクザの桑原と堅気の二宮がコンビで訪れるというのはかなり笑える。風刺効果もさることながら、本当に昨今の情勢にあった小説だと思う。国際問題、特に北朝鮮を語る上で読んでおいて損はない「文献」的な役割も果たしてくれる、稀有な小説だろう。(物語の中では、まだ前の時代の指導者が全盛だから、古い感はあるが、国の体制やあり方は変わっていない。そこに含まれる知見やエッセンスは何ら色褪せることがないのだ。だからこそ、古い小説であろうとも読む価値がある)15年以上前に発表された作品ではあるが、その内容は2018年の今こそ読んでおくべきもののような気がする。是非、北朝鮮でロケをして、映画化してもらいたい。