電子書籍の市場規模は◯◯◯◯億円

インプレス発表だと2017年度の予測は・・・

電子書籍の業界人が心待ちにしていることがある。それはインプレス社が出す『電子書籍ビジネス調査報告書』だ。大体、例年夏頃に発表される。2017年版は7月31日に刊行された。

Amazonで8万円程で売られている。個人で手に入れるには厳しい値段だ。(ちなみに会社でも、おいそれと買ってくれる代物ではない)

ただ、こちらのニュースリリースや

インプレスの直販サイト「インプレスブックス」には、結構肝となる詳細なデータが抜粋されて出ている。かなりの大盤振る舞いである。誠に遺憾ながら、多くの業界人がこのデータをただで見ているのではないだろうか。(流石に、メディアドゥのように決算資料に引用している会社は購入しているだろうが)

社内資料などには、断りもなく、ふんだんに使われている光景をよく目にする。8万円が無理なら、せめてインプレスの出している本を買ってお布施代わりにするくらいした方がいいぞ。

かくいう私も今から上述のページを参考に、グラフを使わせてもらうのだが、この数字を業界人は見て「ああ、今年も、これからもまだまだ伸びるな電子書籍業界」と胸をなでおろすのだ。安心のための精神安定剤ならいいのだが、危機感を煽られて、気持ちを乱されるケースもある。よくあるのは「全体が伸びているのに、うちの電子書店は全然伸びていない!」という悲鳴に近い嘆きもよく聞く。

さて、そんな伸びている電子書籍業界であるが、インプレスの見立てでは、2016年度は1,976億の市場規模だったそうだ。これには電子雑誌が入っていない。入れると、2,278億円となる。以下にインプレスのデータをもとに作ったグラフを示す。

インプレス電子書籍市場規模推移グラフ

2017年度の予測は2,630億円だそうだ。東京オリンピック後の2021年度は3,560億というかなり大胆な予測が成されている。

本当にこんなに多いのか

本当に、このインプレスの市場予測は正しいのだろうか。何故こんな疑問が湧いて出るかといえば、

  • 他社の似たような調査との乖離があること
  • 実感を伴わない

この2点が理由だ。

他社データとの乖離

以前は多くのシンクタンクや調査会社が電子書籍の年間レポートを出していたが、今や残るのはインプレスと今から出てくる出版科学研究所だけだ。出版科学研究所という仰々しい名前が付いているが、要するに業界団体である。トーハン中心になって出版各社が名前を連ねている。

上のリンクは、出版科学研究所の親元である全国出版協会の会員会社一覧だ。ほぼ有名な出版各社が名を連ねているのがわかるだろう。

つまり、この会員達が出版科学研究所に売上等のデータを提供しているとしたら、彼らが作り出すデータは存外に正しいものだと言えそうだ。(もちろん、全データを”正確に”業界団体に提出する義務などないだろうが)電子書店の売上全てを会員出版社で賄っているわけではなかろうが、ある程度の推測の根拠にはなろう。

そういう意味で、出版科学研究所の出す市場規模データは一見の価値があると思うのだ。以下の数字は出版科学研究所が出した”2016年”の市場規模だ。注意されたしは、未来の予測はせず、あくまで現状の実績分析にとどまっている点と「年度」ではなく「年」で集計されている点だろう。

2016年の電子出版市場は1,909億円

インプレスは2,278億で、出版科学研究所は1,909億という結果を出している。両社の差には年度と年という差と定義と調査方法に差があるのだろうが、それでも300億以上も違うというのは解せない。ちなみに出版科学研究所の情報は毎年1月に更新される。気になる人は、是非『出版月報』の1月号を年の初めに買おう。

成長感に実感を伴わない

電子書店の人達と話をすると、儲かっている会社と儲かっていない会社の2つに、キレイに分かれる。明暗がはっきりしているのだ。ただ、儲かっている側も、ずっと延々に伸びているわけではない。そんな時にインプレスの爆発的伸びには若干の疑問を呈さないわけにはいかない。

結局、正しい市場規模感は?

私の今現状の判断としてはインプレスの出している規模感はやや勇み足という感じだ。それでも成長している市場の傾向を否定するつもりはない。となると、1,900億と2,200億の間というのが正解なのかもしれない。2,000億程度という具合だ。(答えは誰にもわからない)今後の予測に関しては、成長率が鈍化していくことを考えると、もう少し落ち着いた推移になるのではないだろうか。私も各社の推計をしているのでそれで出した市場規模感もこのサイトを通していつか記事にしたいと思う。